ほら、ほらね!
言った通り、当初と違う所に着地しちゃったよ!!(笑)
でもいいんです。
これはこれで満足できる話になりました(^^♪。
そもそもは公瑾が花ちゃんに奔走させられる話を書きたかったので。
前半でそれは達成してるから良いのです♪
まあ3つに別れてしまったのは私の力不足故なのですが、公瑾の溺愛っぷりが垣間見えていれば良しとしましょう!
それでは。
ご期待にそぐわない結末だった場合はご容赦くださいませm(__)m
お楽しみ頂けましたら幸いです(^^♪。
努めて表情を取り繕いながら、態(わざ)と冷めた言葉を解き放ったのには理由があった。
「――――――」
「……公瑾さん……あの…」
「なんですか?」
『無駄足を喰わされた』 との酷い評価を下しながらも、公瑾の言葉に責める響きを感じる事が無かったから…花は不思議そうに彼を見上げた。
「―――なんだか、楽しそう…というか…。 私、いっぱい迷惑をかけたのに…」
そう、言葉とは裏腹に公瑾の内には純然とした喜色があり―――それは自然とにじみ出ていたのかも知れない。 色恋事には兎角(とかく)鈍感な花ではあるが、公瑾のそうした心の機微には敏感で…。
今も、常ならばもう少し厳しい言葉で追いつめられるのに、突き放してはいるがどことなく…どことなく嬉しそうというか、楽しげな響きを感じ取っていた…。
「…そうですね…」
上目遣いにこちらを見る花の表情がいじらしくて、公瑾は思わずその頬に口接けを落とした。
「!? /// こ、公瑾さん!!??」
「思いがけず、貴女の快い変化を垣間見ることができて、嬉しいのですよ」
「!!?? な…何の事ですか!?」
頬を押さえ真っ赤になりながら花は恨めし気に公瑾を見る。
城と違って見知った目が周囲にないとはいえ、こんな人目につくような場所でこんな事…!
そう訴える彼女の様が可愛くて、公瑾は更に顔を綻ばせた。
「さきほど、気に入った品は高くて手が出なかったと言いましたね?」
「! はい…」
さっきまでの落ちこんだ気分を思い出したのか、しゅんとして花は頷いた。
―――無理もない。
きっととても張り切って店を巡ったのだろう。
素直な彼女は自分が感じた喜びを、相手にも返したいという想いでいっぱいで色々と考え、いつか叶うその日を楽しみにしていたに違いないのだ。
もしかしたら、そんな日の為に使い道の少ない金銭をとっておいたのかも知れない。
そう、軍師見習いとして孫家に仕える花にも一応は給金が出ている。
しかしそれが公瑾の一存で、通常よりも低く抑えられていたことは花も知らない事だった。
城に暮らし、遠方の家族に仕送りをする必要も無く、又必要なものの大部分を公瑾が世話をしている以上、彼女の手元に多額の金銭があることは好ましくないと判断したからだ。
実際彼女は支給されたそれを、殆ど使うこと無く文机の引出しに仕舞い込んでいた。
だがこの地で孫家に仕えるようになってからずっと貯めてきた金銭である。
かき集めれば、それ相応の額になっていたはずだ。
それでも望み通りの品が買えなかったという事は―――。
「…………公瑾さん?」
しばしの沈黙に耐えかねて、花が心細そうに問いかける。
「―――わたしは、弟子と言うものを持った事がありませんが、…もしも持っていたとしたら、このような心持ちになるのでしょうか…」
「え!?」
まるっきり話が繋がっていないように思えて花が目を丸くする。
「だとすれば、その成長を目にできる喜びと言うのは、中々に心地良いものですね…」
「公瑾さん? その…言ってる意味がよく分かりません…」
一人で納得しているらしい公瑾に花は頬を膨らませて見せた。
元々公瑾と花では物の捉え方も理解の仕方もまるっきり違う。
およそ一般的な理解力を持つ花には、公瑾の話す内容は、3段飛びに話の飛躍を感じさせる事しばしばで、そのたびに花は臆することなく公瑾に説明を求めてきた。
今にして思えば―――そうしたやり取りで花が得る公瑾流の物の見方や理解の仕方も…いい意味で彼女の成長を促してきたのかも知れない。
「…そうですね、全部説明して差し上げますが、その前にそろそろ城へ戻りましょうか。 でなければ、二人揃って締めだされてしまいますからね」
「ぁ、はい……あの」
「どうしました?」
馬屋へ戻ろうと踵を返す公瑾の背に、花は躊躇いがちに声をかける。
「あの、ここまで、探しに来て下さってありがとうございました。 お詫びになにか…」
花の言いたい事が分かって、公瑾は小さく頷くと、
「では、そこの林檎を1つ頂きましょうか」
「え!? そんなもので良いんですか?」
「えぇ…貴女の特技を、まだ拝見した事がなかったですから…。その後は……そうですね。 それを貴女が手ずから わたしに食べさせて下さるなら尚 良いのですが…」
「!! /// わ、わかりました」
公瑾の言葉に頬を染めながらも頷いて、花はすぐそばの露店で林檎を1つ買うと大事そうに布にくるんで抱えて公瑾の下に駆け寄った。
そうして公瑾は外套を被らせたままの花を連れ、馬屋まで戻った。
「それで、さっきの話の続きなんですけど…」
馬に乗り、公瑾の前に座らされた花が小さく尋ねた。
相変わらず頭から外套を被っている為公瑾が誰と一緒に馬に乗っているのか周囲の者からは判別できない仕様になっている。
「そうでしたね。 花、貴女が先ほど買った林檎は、城で供されても遜色のない良質のものです」
「…はい」
「貴女の手持ちでも十分に買う事が出来ましたね?」
「はい」
花は大事そうに抱えた布包みに目を遣りながら頷いた。
「一方、香や墨、筆や紙といった物には手が出なかった…」
「…はい…」
「それは店の表に並べてある品ではなかったのでしょう?」
「はい、お店の中に置かれている物を見て…それからもっと他に無いのかお願いして出してもらいました」
花の言葉に公瑾は満足そうに頷く。
「それですよ」
「??…ドレですか??」
「店の表ではなく店の中に置かれていた品……それも店の奥から出してもらった品というのは、その店で取り扱う最も良質の品物だという事ですよ」
「――――…はぁ…」
公瑾の言葉に頷きつつも花は首を傾げた。
良い品を欲しいと思ったのだから、それを出してもらうのは当然だし、それを買う事が出来なかった事を喜ぶ公瑾の意図が見えてこない。
「やっぱり…良く分かりません、公瑾さん」
申し訳なさげに眉をさげ、花は言った。 細かく説明されても分からないものは分からない。
けれどそんな花に公瑾は柔らかな笑みを浮かべたまま、さらなる結論を口にした。
「くす…つまり―――貴女はそれだけの目利きをした、という事です」
「……めきき…?」
「えぇ…貴女は一生懸命品物を見て、わたしに似合うもの、釣り合うものを探してくれたのでしょう?」
「はい…」
「それは、日々わたしの身の周りにあるものを見て、貴女自身が良いものを見極める目を養ったという事です。 誰に教えられたわけでもないのに自然と身に付けたのでしょう…。それほど注意深く物を見て触れて、色やツヤ、細やかな質感を貴女の感覚に取り込んだ結果なのです」
「そ…んな、大袈裟な…。 私はただ、公瑾さんに使ってもらいたいと思うものを探していただけで…」
大仰な公瑾の言葉に花は肩をすくめて否定した。
「こういってはなんですが、城にあるものも含めわたしが日々使っている品は十分に質の良い高価なものです。 普通に買おうと思って手の出せる物ばかりではありません。 おそらく貴女の感覚の中には、言葉で説明できるような明確な判断基準などないのでしょう。けれど唯一、 『周公瑾に持たせたいモノ』 という尺度において物を見る時、その眼力はすさまじく威力を発揮したのです。 『わたしの為』 に選んだ品がどれも高価だったのは……わたしが普段からそういったモノを使っているからで…それらを使うわたしを、貴女が目に焼き付けていた結果なのです…」
「――――」
言われた内容を一度では理解できなくて、何度も繰り返し噛み砕く。
つまり―――公瑾の傍にいて、公瑾が普段使う諸々の道具類を目にする事によって、花の目が良質のものを見極める力をつけた…という事だろうか?
ただしそれは、公瑾に似合うか否か…という尺度でなければ発揮できない眼力―――であるという…。
「…公瑾さん限定で…モノを見る目があるって事ですか!?」
「そういう事になります」
「~~~~っ…そ、それはそれで……恥ずかしいというか、なんというか…。 あまり役に立ちそうもないですね」
「そうですか?…そういう形ででも貴女の成長と深い想いを知ることができて、わたしは嬉しいのですよ?」
「/// そ…うですか…」
なんだか照れ臭いけれど、公瑾が喜んでいる事が素直に嬉しくて、花は頬を染めつつ顔を綻ばせた。
まさか公瑾にまで『弟子のようなもの』…と称して貰えるとは思わなかった。
くすぐったいけれど、彼の言うようにとても心地よい響きだった。
「それにしても……大喬どの小喬どのにも困ったものです。 あのお二人の言葉を鵜呑みにしてしまう貴女の素直さにも困ってしまいますが…」
しかし公瑾が表情一変、顔を曇らせてそう口にすると、
「! あの、大喬さん小喬さんを叱ったりしないで下さい…お願いします! 元々は私がちゃんと誰かに確認すればよかったんですから…!」
慌てて花はそう訴えた。
ここまでの大事になったのは、大小の他愛ない悪戯のせいと言うよりも、それに乗せられて突っ走ってしまった自分の迂闊さに拠るところが大きい。
「……それでは、わたしの肝が冷えた分は、誰に責任を取ってもらえば良いのですか?」
今回とばっちりを受け、右往左往した公瑾の言い分は尤もだ。
誰かに何かしらの責任を取ってもらわなければ腹の虫も収まらないのだろう。
「それはっ……その…/// 私が、責任をとります」
一瞬ためらったものの腹を決め花がそう言うと。
「―――良いのですか? そのような事……後で取り消しはききませんよ?」
ふぅ、と耳元に囁きこまれて花は身を強張らせる。
―――早まったかも知れない…と思いつつも、発した言葉が戻るはずは無いから。
「女に二言(にごん)はありません」
それは花の故郷の言葉だったけれど、きっと公瑾にならその意味が通じるだろう。
そう思って発すれば、案の定公瑾は一瞬神妙な顔を見せたが 次にはニコリと微笑んで。
「良いお覚悟です――――偶(たま)には…あの方たちの悪戯も、良い結果をもたらすものですね…」
にこやかなその様子に花は何だか違和感を覚える。
何だろう? あっさりと手を退かれたような気がする…。
「……………公瑾、さん?…あの…まさか、大喬さん小喬さんの事を持ち出せば、私がお二人を庇うだろうって分かっていて今のセリフを…?」
「さぁ…どうでしょうね? ご想像にお任せしますよ」
ニヤリと笑んだその表情に確信を得る。
花は顔を真っ赤にして、ポカポカと公瑾の胸を叩いた。
「そんなのズルイです!公瑾さん!」
「わたしの肝が冷えたのは事実ですよ。恐らく寿命も1・2年縮んだ事でしょう…。 林檎一つで万事 水に流すには、少し安すぎると思いませんか? この周公瑾を走らせたのです――――そのくらいの罰はお受けなさい」
「!!~~~~っっ」
最後の一言には返す言葉も無く花は顔を真っ赤にして公瑾を睨む。
けれど気にも留めた様子も見せず涼やかに微笑んだ彼は、外套の中の恋人に甘やかな口接けを一つ贈ると何事も無かったかのように顔をあげ馬の脚を早めた。
口接け1つで抗議の言葉も抵抗も封じられ…花はただ彼の胸にしがみつくより他なかった。
目の前には城門が迫り―――陽は傾き、その姿を半分程隠そうとしていた。
-終-
10 | 2024/11 | 12 |
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現在お礼文3件UPしています!
(超小ネタSSSより OZMAFIA1・緋色1・
ブラコン1・2013.8.13.)
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お見苦しいところが多々あると思いますが、よろしくお付き合い下さいませ。
こちらで取り扱いますゲームの内容やそれに関連する創作SSに関しましては、製造元などとは一切関係がございません。あくまでも個人的に書き連ねているものですので、ご理解・ご了承のうえお楽しみ下さいませ。
なお、内容に関しましては無断転記等一切ご遠慮下さいますようお願いいたします。