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いらっしゃいませ! このブログでは、カヌチ二次創作(緋色の欠片、ウィル・オ・ウィスプ、ラスエス3他)、乙女ゲームの感想など、管理人ベルルの暴走気味の妄想をつらつらと書き綴っております。現在「三国恋戦記」絶賛応援中です!!     -since 2009.7.25-
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三国恋戦記SS > 公瑾花 です^^。


すみません、少し時間が空いてしまいました(^^ゞ。
しかも書いても書いても終わらなくて…(苦笑)。
ついでに当初とは方向性が微妙にずれた着地をしそうな…予感がします^^。
それでも、公瑾花は書いていると楽しくて……ついつい自分の趣味に走ってしまいます。

あぁ…でもまさか、年をまたいで仕上げることになるとは夢にも思ってなかったよ……。


それでは。
いつも通りの感じですが、お楽しみ頂けましたら幸いですm(__)m






「(はぁ……そろそろ、帰らなきゃ…。でも、どうしよう……)」
壁にもたれて溜息をついた。
もう半刻ばかり、そうして溜息をつき続けている。 項垂れた視線の先は、疲れ切った自分のつま先。 帰らなければと分かっているのに、動く元気が出てこない。
そうして、もう何度目か分からない溜息を落とした花の視界の端に、人影が入り込んできた。
それは行き交う人のものではなく、明らかにこちらに正対した位置で動きを止めた。

何だろうと思い顔を上げた先に立つ人物に驚いて、花は息をのむ。
「っ! …こう、きんさん…」
「――――…一体貴女は……何をやっているのですか?」
「あ……ぁの…」
渋面を取り繕えぬまま公瑾は声音厳しく問いただしていた。
けれど花の内には返すべき言葉が存在しなかったから…。
「………ゴメン、なさい…」
再び項垂れて―――小さくそう口にするのがやっとだった。

「何に対して謝っているのですか?」
今それを追求したとて状況が変わるわけではないのに、公瑾はそれを口にせずにはいられなかった。
訳も分からないまま――――心配して、心配して、仕事も何も放り出してただ、その無事を祈りながら探していたのだ。
望み通り無事な姿を発見したというのに。
見つかった瞬間に、公瑾の内には静かな怒りがわきあがっていた。
―――けれど。

「~~~~っ……ごめ…なさ…っ!?」 バサリ
もう一度同じ音を発しようとする少女の頭から手にした外套を被せると、彼女の腕を引いて力強く抱きしめていた。
「本当に……貴女という人は…!!」 
ぎゅうぅぅっ!と。
腕に込められた力の強さが、そのまま公瑾の感情の強さを現していた。
存在を確認するというよりは、己自身にその身を刻み込んでしまおうとするほどの力強さに―――花は思わず、彼の腕の中で泣きだしてしまっていた。


「―――少しは、落ち着きましたか?」
少しの間泣いていた花の小さな肩の震えがようやくおさまってきた。
腕の力を緩める事のできないまま、公瑾は静かに問う。
公瑾の腕の中、外套を頭から被ったままの花は小さく頷いた。
「―――で、わたしをこんなにも走らせた軍師様は、何が目的でこんな事をなさったのですか?」
「それは……その…」
もはや、『怒らないで聞いてくださいね』などという可愛らしい前置きをするのも憚られるほど公瑾の静かな怒りを感じて…花はやはりしどろもどろになって言葉を探す。
「はぁ…………怒りませんから、ちゃんと全部話して下さい…」
「~~~っ あの…ですね」
「はい」
「その……」
腕の中で小さく身じろいで、花は外套の影から窺うように公瑾を見上げ。

「――――贈り物を、買いたかったんです…」
「は?」

小さく震える声が耳に届いた時、その内容に公瑾は思わず素で聞き返してしまっていた。
『贈り物』と、言ったのか…?
頭の中でもう一度考え直し彼女の言葉を繰り返す。
―――贈り物を買いたかった、と?
「………それは…大喬どのや小喬どのに…ですか?」
「…いいえ…」
「? では、尚香さま…?」
「………いいえ…」
そう返事をしながら、まだ涙にぬれた瞳がじっと公瑾を見つめる。
「では一体…誰に…?? まさか仲謀さまではないですよね?」
「違います。――――その…」
1度視線を逸らし、けれどもう一度公瑾を見上げて花は口を開いた。
「/// 公瑾さんに、です…」
ほんのりと頬を染め、ようやくその音を口にした。
「―――― わたし…?」

全く考えていなかった答えに、公瑾は一瞬思考が停止してしまったのだけど。
確かに。
贈り物を贈りたい相手に一緒に買い物に来てもらうというのは、中々強気な行動だろうという事は公瑾にも理解できた。
けれど―――。
「それは………、何故…? お気持ちは嬉しいですが、訳もなくそのような…」

そう…彼女の気持ちは嬉しい。 面食らったとはいえ、恋しい相手から何かしらの思いのこもった物を贈られるというのはやはり嬉しいものだ。
しかし、そのような事をされる理由が見当たらない。
それとも突然思い立って、贈り物を贈りたくなったということだろうか?
その場合はあまりに突飛過ぎて、こちらの思考も追いつかなくて当然だろう。
そこは今後は改めてもらわなければ―――こんな事が何度もあっては、こちらの身も心も保ちそうにない。
けれど花は公瑾の言葉にふるふると首を横に振って、

「って…今日は、公瑾さんのお誕生日だって聞いたから……」
「―――――はい??」
花の言葉に、公瑾は今日2度目の素での返事をしてしまっていた。

「前に、私の誕生日に素敵な櫛を買ってもらったから……絶対私も公瑾さんに何か気に入って貰えるものを贈りたかったんです。 でも……」
そこで再び彼女の大きな眼には涙がにじむ。
「何処を探しても……気に入るものが無くて…。 香木や筆や墨や紙…布地なんかも見てみたんですけど、気に入ったものはどれも値段が高くて、私の手持ちでは買えなかったんです…。 私―――特別贅沢なんてしたつもりは無かったんですけど、満足にプレゼントもできないだと思ったら、情けなくなってしまって…」
「ぷれぜんと…?」
聞きなれない言葉に公瑾がつい口を挟むと、
「私の国の言葉で、贈り物のことです…」
花はそう答え、外套の端を握って更に続けた。
「この外套も…お店の前で悩んでいたら声をかけられて…その人に売ってしまいました。それでもお金が足りなくて…!っそう…、コレ! 私、売ってしまったのに、どうして…!」
涙がこぼれそうになって、慌てて花は顔を拭った。
「さきほど、これを持っていた方から譲って頂きました。 もちろん、お代はそのままお返ししましたよ」
「勝手な事をしてすみません…」
更に小さくなって花はもう一度謝罪した。

そんな花を見下ろしながら、公瑾は少々戸惑いつつ、
「それで…わたしの『誕生日』ですか……、誰がそのような事を?」
9割方予想はつくものの、念のため確認をする。
「大喬さん、小喬さんです…。今夜宴があるからねって…」
「やはり…というか、当然そうでしょうね…。 はぁ……花、貴女はあのお二人の言葉を、誰かに確認しましたか?」
「え?」
「…大変申し上げにくいのですが……貴女はまた、彼女達に担がれたのですよ」
「え??」
「わたしの誕生日、は……まだ1月ばかり先の事で……今日ではありません」
「………うそ…」
「ですから、今日貴女がぷれぜんとを買うために奔走する必要など無かったのですよ。勿論、わたしも貴女を探してこの大通りを何往復もする必要はなかったことになります」
努めて表情を取り繕いながら冷めた口調で言い放つ。
その内容を理解する次第に、花の表情は更に悲愴なものへと変じていった。

「じ、じゃあ…今日の私は…」
「――――とんだ無駄足を喰わされた、ということになりますね」
小さく吐息をつきながら、公瑾はそう締めくくった。


 -続-

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