幸せのカタチ （公瑾×花）

三国恋戦記ＳＳ　＞　公瑾花　です。


実際に私もうつらうつらしながら…な状態で頭に浮かんだ一場面です(^^ゞ。

今回は、公瑾花ＣＰ初の夫婦設定です！（明確には表記してませんが：笑）
結婚しても―――相変わらず臆病な公瑾は、きっと肝心なところでは花ちゃんの手の上で転がされるんだろうと思います。
その方が絶対 幸せなんです＾＾。

それではご興味のある方は続きの先へお進み下さい。
お楽しみいただけましたら幸いですm(__)m

「……ん…」
夜中に…ふと、意識が浮上する感覚があって、花は重い瞼をあげた。
こんな夜中に目覚めても何もないはず、と小さく身じろぎながらそう思った時、
「……目が覚めてしまったのですか？」
そっと、空気を震わせる静かな声が頭の上から響いてきた。
半分寝ている頭でもその声が誰のものなのかなんて、考えなくても分かる。
だから、安心したように再び目を閉じながら花はその名を呼んだ。
「……公瑾さん」
「まだ夜明けまでは随分ありますよ……もう一度、眠りなさい…」
どうやら相手は眠っていた訳ではないようで、明らかに凛とした…けれど諭すようなその声に花は少し眉を寄せ、それから猫のように公瑾の胸に身をすりよせた。

「公瑾さんこそ……どうしたんですか…？　眠れないんですか？」
もしも眠れないなら――――子守唄でも歌ってあげよう。
小さな子供をあやすように背中を軽く叩いてあげながら…。
そんな事を思いながら花が尋ねると、
「――――幸せの形を…見ていました。　そのぬくもりや重み…ここに存在しているその証を、確認しておきたくて…」
「ん………難しくて……良く、分かりませんけど―――――安心して眠って大丈夫ですよ？　…眠ってる間に何処かに行ったりしませんから……。　私はこの先もずっと…貴方の側にいます…」
再び侵食しだした眠気のため よくまわらない頭でそう答えながら、花は公瑾の背に手を廻し、彼が自分をそうしている様に彼の体を抱きしめた。

「何処にも……行きません。ずっと――――貴方の…そば、に…」
「花…？」
途絶えた言葉の後に続いたのは、穏やかな寝息…。
幸せそうに眠るその顔に公瑾は小さな溜息を洩らす。
「相変わらず――――本能的に こちらが一番欲しい言葉を、口にしてしまうんですね……貴女は」
そっと花の体を抱きしめながら公瑾は小さくこぼした。

どれだけ想っても。
どれだけ共に夜を過ごしても。
この不安が胸の内から去る事は無い…。
いつか突然に―――この愛しい女（ひと）が、消えてなくなるのではないか、と。
この地で息づいた痕跡さえも消えて……己の中にあるこの感情だけが行き場を失くし、ただ茫然と空虚な現実を見つめる日が来るのではないか、と。
だからこうして―――この腕にある幸せの形を実感することで、束の間その不安をやり過ごしてきたというのに。
それすらも跳ね返してしまう程の、根拠のない……けれど強い意思に基づいたその言葉に、いとも簡単に救われてしまう自分がいる…。
彼女から どんな魔法をかけられているというのだろう？

「――――花……やはり貴女を手離す事なんて到底出来そうもありませんから……どうかいつまでもこの腕の中にいて下さいね…」
届くはずの無い言葉―――。
静かに静かに吐露されたその声音が消えた瞬間、まるでそれに頷くかのように花は公瑾の腕の中で身じろいだ。
「やはり貴女には――― 敵いませんね…」
その様子に小さく笑んで彼女の髪に頬を寄せると、公瑾は目を閉じた。

―――やがて閨房からは穏やかな寝息が２つ、静かに響きだした…。


　－終－