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いらっしゃいませ! このブログでは、カヌチ二次創作(緋色の欠片、ウィル・オ・ウィスプ、ラスエス3他)、乙女ゲームの感想など、管理人ベルルの暴走気味の妄想をつらつらと書き綴っております。現在「三国恋戦記」絶賛応援中です!!     -since 2009.7.25-
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三国恋戦記SS > 公瑾花 です。


前作がさっそく、行き詰りました(*^_^*) ので、通常運行分をひとつ…。
(趣味「だけ」に走っちゃいけませんね~:苦笑)

今回は、気持ちで書いておきたかったお話。
いつもならナーバスになりそうなところをサクっと切り落として、あっさり目に仕上げてみました。
きっと、こういう事を していたらいいなという願いを込めて。
私からも。
――――届くと、いいな…という祈りを込めて。


それでは。
いつもよりまとまらない感じですが……宜しければお進みください(^.^)。
お楽しみいただければ幸いですm(__)m。


















パタパタと軽い足音が廊下を駆ける。
「あれー、花ちゃん、そんなに急いでドコ行くの?」
「向こうの東屋です! 公瑾さんと約束してて…」
花が大小姉妹にそう答えると、彼女らは顔を見合わせニヤリと笑んだ。
「なんか面白そう!」
「ついて行ってもいい?」
答えるより前に、二人は花と並んで駆け出していた。

「……何も、面白く、ないですよ?」
そう返す花に大小姉妹は、彼女が大切そうに抱えている何かに目をやりながら、
「いーのー」
「公瑾で遊ぶからー」
と気にした風もなくついて来る。
二人のあんまりな返しに苦笑したところで、目指す東屋が見えてきた。

「あれ?」
「あ、尚香ちゃん!」
「仲謀もいるー」
東屋にいる公瑾のそばには、彼らの主君とその妹姫がいた。
「……遅くなって、すみま、せん…」
息を切らしながらの謝罪に公瑾は小さく肩をすくめて見せた。
「走らなくても結構ですから、もう少し落ち着いて行動してください」
「はぁい…」

久々に、渋面を見せられて叱られてしまった。
花はなんだか面映ゆい気持ちのまま肩をすくめた。
もう何度、こんなお小言を言われただろう…。
もはやそのセリフは、自分にとって愛情さえも感じさせてくれる魔法の言葉の一つである―――なんて言えば、また渋面を見せつけられるだろうか?

「それで…」
「あ、はい、できました!」
公瑾に促され、花は大事そうに抱えていた何かを差し出した。
「ねー、公瑾が持ってるのって なに?」
小喬が問うと仲謀が苦笑しながら割り込んできた。
「書簡だってよ!」
「え”!?」
「あの『量』で!?」
大小の声に花も公瑾の手元を見ると、なるほど確かに書物1冊分はあろうかと思えるほど厚みのある、折りたたまれた書簡がある。

「え、公瑾さん……こんなに…?」
「当たり前でしょう。 まず、時候の挨拶から始まって、」
「自分の出自や経歴から現在に至るまで何やかんやが、ズラズラズラ~っと書かれてるぜ!」
公瑾の言葉の後半を、彼の主が自分の事のように胸を張りながら引き継いだ。
「仲謀さん、中を見たんですか!?」
「見られて困るようなことは書いていません」
しれっとした顔でそう答える公瑾の手元から、小喬がすかさず その分厚い書簡を取り上げた。
「私が確認してあげるよ!」
ばさり…と重々しい音がして、綺麗に畳まれていた書簡は風に乗って最後まで開ききってしまった。

「大喬どの、小喬どの、そのように乱暴にしては…」
尚香がたしなめるのも聞かず、姉妹は書面にくぎ付けだ。
そしていつもの辛口な感想が発せられる。
「ぅわー…ほんとだぁ。 なにこれ、なんかいっぱい書き過ぎてて いやらしい」
「そーだよ、スゴイを通り越してイヤミだよ!」
「事実をありのままにお伝えしただけです。さぁ、開いたからには 元通りにきちんとたたんで下さいね」
公瑾がにこやかにそう促すと、大小は心底嫌そうな顔をした。

「小喬さん、私も手伝いますから」
風に流れて、ずいぶん先の方へ行ってしまった書簡の端を花はそっと拾い上げた。
そして、そこに書いてあるものに気づき、公瑾を振り返る。
「―――公瑾さん…これ」
「…貴女は、なんと書いたのですか?」
「……いっぱい、書きたいことがありすぎて、結局まとまらなかったんです。だからコレだけ届けばいいかなってことを一言、書きました。」
「見ても構いませんか?」
「はい…」
照れたように微笑う花に、公瑾は彼女から預かった書簡を開いて中を見る。


そこには――――たった一言。
簡潔な、その言葉に…。


「………そうですね、これが一番、伝えるべきことでしょうね」
「はい」
花はうなずいて、公瑾の書簡を折りたたみ始めた。
「ホントに自分の事ばっかり!」
「公瑾、ある意味感心するよ~」
折りたたみながら内容を読んでいた大小姉妹が、呆れながらそう言うと、
「大小、男の意地みたいなもんだから、そっとしといてやれ」
と仲謀がフォローともいえないようなことを言い、
「そういうものですか? あぁ、では公瑾も、求婚に関しては人並みの事をしたかったのですね?」
意外そうに首をかしげながら尚香がそう言った。

「尚香さま、わたしは彼女に関する事だけは、どのような事も人並み以上の事をしたいと思っていますし、実際そういたしますよ」
「公瑾!こえーよ、マジで言うなって!」
「花さん限定…というところは公瑾らしいと思いますけど、恐いですvv」
「こればかりは譲れませんので…」
君主兄妹の言葉にそう返しながら、公瑾は小さく笑った。
その一瞬の笑顔に、仲謀は何とも言えない懐かしさのようなものを感じる…。

あぁ、そう…。
きっとこれからも――――。
この笑顔は、当たり前に目にするものになるだろう…。

そう予感して 安堵している自分に気づき、仲謀は人知れず苦笑を漏らした。
「じゃぁ俺たちは行くぞ、ほら大小も」
「お邪魔をしてはいけませんからね」
書簡をたたみ終えた花が公瑾にそれを手渡す頃合いで、仲謀たちはぞろぞろと東屋を後にする。
「ま、実際にあれだけの口上を聞かされるとしたら大変だと思うけどさ」
「それでも、花ちゃんの事を思っての一計だもんね」
「許してやるか!」
「仕方ないなぁ」
「…でもさ」
「うん」
そこで大小は顔を見合わせて小さく首をかしげた。



……花ちゃんのも そう だけど―――
公瑾の書簡の最後のところ、読めなかったね…





「ようやく静かになりましたね」
卓の上に置いていた香炉から火種を取り出すと、公瑾は重ねて置いた2つの書簡に火を移した。
ゆるゆると燃え広がる炎を見ながら花は小さく息をつく。
「公瑾さん…ありがとうございます」
「何のことですか」
「こんな風に…手紙を書くなんて思いもしませんでした。 もちろん、気持ちの問題なんでしょうけど、それでも心の整理にはなりました」

細い細い一筋の煙が立ち上がり始め…それを見つめながら花は隣に立つ公瑾の手に触れた。すると公瑾は当たり前のように互いの指と指を絡ませあうようにして花の手を捕えてしまった。
ぎゅっと握りあった手の、心地良い力加減に酔いながら花は、気になっていたことを音にした。
「―――――あちらの文字を覚えたいと言ってくれたのは、この為ですか…?」
「……さぁ…どうでしょう…」
「――――――――――公瑾さんは、時々いじわるです…」
暮れ始める空に昇っていく白い煙の筋を見上げながら花がそう呟くと、
「そうですね………ですがそれはご承知のことでしょう?」
そんなふうに答えながら公瑾は、絡み合うように繋いだ手を不意に持ち上げて、彼女の指にそっと口接けた。

その指が―――――偶然にも左手の薬指だった事に気付き、花は不思議な幸福感に満たされる…。
どこにいても……公瑾と共にあれば、こんな風にふんわりとした温かいものに満たされてしまうのだ、自分は。

そのことを改めて噛みしめながら、花が頷くと公瑾は淡く微笑んだ。
「この煙は…………あちらに、届くでしょうか……」
「届きますよ…きっと……」
花の小さな問いかけに、疑う余地もないという風情で公瑾が答えた。
そうして…想いを乗せた煙の筋が 消えてなくなるまで、二人の姿が東屋から出ることはなかった。






 ごりょうしんさまへ 

  ―――はなは かならずしあわせに します。

  ―――こうきんさんといっしょに しあわせになります。




 -終-
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